日本で一番?有名な聖人、聖ヴァレンタイン(バレンタイン/ウァレンティヌス Valentinus)について

2月が近づくと、2月14日のバレンタイン・デーの広告があふれますね。特設会場や専門店でチョコレートが販売され、バレンタインにちなんだ様々な商品が売られる様子を見ていると、このバレンタインさんが日本で一番有名な聖人なんじゃないかと思ってしまいます。しかし「バレンタインって、誰?」って思いませんか?

調べてみると、同じウァレンティヌス(Valentinusをラテン語で読むとこうなります)という名前で記録に残っている人物が複数あります。ローマ郊外にあった古代キリスト者の墓地に4世紀中ごろ教皇ユリウス1世が聖堂を建て、その聖堂が6世紀以降ウァレンティヌスという3世紀の殉教者に捧げられたものとみなされて、2月14日が彼の殉教の日として祝われるようになったという説と、イタリア・テルニ市近郊に、2月14日に祝われるウァレンティヌスという殉教者の墓があり、8世紀に彼に捧げられた聖堂が立てられました。5~6世紀に書かれた殉教記録によれば彼はテルニの司教(その地域の教会で働く人々と働き全体の責任者)だったそうです。諸説ありますが、歴史上実在したのは3世紀ごろにテルニの司教であったウァレンティヌスであり、彼への崇敬が各地に広まったのではないかと考えられています[i]

中世末期のフランス、イングランドなどではウァレンティヌスの祝日である2月14日に恋人たちが互いの愛のしるしとして贈り物をする慣行が生まれました。これは古代ローマの豊穣祈願祭ルペルカリアが起源であるとも、その頃から鳥がつがい始める(ペアになる)というヨーロッパの民間伝承に基づくともいわれています[ii]。ただし、第二バチカン公会議の典礼改革の際、実在が確認できない聖人を教会暦から整理した結果、現在のカトリックや聖公会では、ウァレンティヌスの日は公式に祝日となっていません[iii]

なぜ恋人同士が贈り物を贈りあう習慣が始まったのか、ということについても、さまざまな説がありますが、3世紀頃のローマでは、士気を損なうからということで兵士の結婚・妻帯が禁じられていました。にもかかわらずテルニのウァレンティヌスが司祭として兵士たちの結婚式を執り行っていたこと、まだキリスト教禁教の時代ということで、彼は逮捕され、棄教しなかったために処刑されて殉教しました。そのため彼が処刑されたとされる2月14日に恋人たちが“愛のしるし”を贈りあうようになったと言われています。[iv]

バレンタインと言えばチョコレート、それも女性から男性へ贈って愛の告白をするというのは、実は日本だけなのです。アメリカやヨーロッパでは男性からも女性からも、チョコレートに限らず花束やプレゼントなどを贈りあいます。1960年代に日本のチョコレート会社がハート形のチョコレートを販売して「女性から男性へ愛を告白する日」とアピールしたことが全国に広がり、現在のような一大イベントになったそうですよ。[v]

さて皆さんは、どんな「バレンタイン・デー」を過ごされるのでしょうか。

(チャプレン 中尾貢三子)

[i] 『新カトリック大事典 I 』「ウァレンティヌス」の項より(研究社1996 604ページ)

[ii] iに同じ。

[iii] 日本語版Wikipedia「バレンタインデー」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%BC

(2022年1月28日閲覧)

[iv] バレンタインの意味と由来って?チョコレートは日本だけの習慣だったhttps://cookbiz.jp/soken/culture/valentine_yurai/

(2022年1月28日閲覧)

[v] ivに同じ。