「京都のおもてなしとライフスタイル」の授業で細辻伊兵衛美術館を見学しました

「京都のおもてなしとライフスタイル」の授業では、京都の暮らしに根差したしきたりや伝統文化、食文化のほか、伝統のなかで新しいスタイルに取り組んでいる企業や人などを訪れています。

さる4月27日(木)には、創業400年を超える日本最古の綿布商・永楽屋が2022年4月にオープンした細辻伊兵衛美術館に伺い、美術館学芸員の説明を受けながら、14代続く永楽屋の貴重な資料、デザイン・技法の変遷を展開、時代背景や人びとの暮らしを写しとってきた手ぬぐいを見学。その後、広報の方から手ぬぐいの使い方の体験で、ブックカバーとティッシュケースカバーをつくりました。14代目細辻伊兵衛さまのご挨拶もあって、伝統を守りつつ革新に挑戦されてきた老舗の心意気を学ぶことができました。

国際観光学部4年生の池田によるレポートでご紹介します。


学外実習前、この授業のテーマ「伝統と革新」と手ぬぐいの関連を、革新=デザインの現代化などと予想していた。今回、実際に訪問したことで細辻伊兵衛美術館における革新とは、「若者が次世代に繋ぎたいと思える工夫」だと解釈した。そのように捉える理由となった場面が2つある。

まず、紙のチケットの代わりに渡された手ぬぐい。企業目線で考えると、紙のチケットよりも費用はかかる。しかし、来館者に印象付けることはもちろん、いま関心の高いSDGsへの配慮も感じられるシステムで、これこそが革新であると実感した。

また、ちょうど行われていたモダンガールの展覧会のように、手ぬぐいに詳しくなくても楽しめる機会が設けられていたこと。これもまた革新であると同時に、手ぬぐいへの興味の入り口となり、伝統の保存にもつながってくると感じる。モダンガールに関心はあるものの手ぬぐいの知識はほとんどないままでの実習であったが、もし私が運営者の立場であればきっかけはなんであれ、手ぬぐいという存在に触れてもらえることに喜びを感じるだろう。実際に客としてその革新を実現できたように思う。
日本最古の木綿商として、あらゆる場面で伝統と革新をうまく共存させておられたことが印象深かった。

手ぬぐいと聞くと七宝や唐草などの柄が思い浮かび、どちらかと言えば「地味」という印象があった。しかし時代が反映された手ぬぐいを見たり、自慢しあう対象でもあったと聞き、むしろ個性を出せる物であるのだと考えが大きく変化した。
また、神事で使用されたり屏風にもなっていたりと「拭う」「覆う」以外の使われ方がなされていたことを新たに知り、興味を抱いた。
展覧会の一部にあった手ぬぐいの花やモダンガールの頬紅のグラデーションは、写真や手描きと見違えるほどの精巧さに驚いた。これを機に、染織技術についてもより詳しく調べてみたい。

スマートフォンやオールインワンが例に挙げられるように「かつて専用のものが個別で存在していたのが、一つで済む商品が開発され便利になった」というパターンが一般的だと認識していた。そのため「手ぬぐいは何にでも使用できるのが魅力であったが、それぞれ専用のものができたことで徐々に使用されなくなった」という正反対のお話が印象に残っている。

最後の体験を通して、手ぬぐいの魅力は【手芸が苦手でも、「結ぶ」という動作のみでサイズに合わせた微調整が可能な点】だと実感した。身の回りの何にでも応用できるということは、普段の生活を好きな柄で統一できるということ。
私自身、人と被らない個性的なものが好きだが、市販のブックカバーやティッシュケースなどは無難な柄が多い。そのため、母にお気に入りの生地で作ってもらったり、インターネットでオーダーメイドの作品を依頼したりといったことが多くあった。しかし手ぬぐいがあれば、自分で気軽に日常を彩ることができるだろう。周囲にも「自分の好き」を大事にしている友人が多く、そんな個性が尊重される現代だからこそ、手ぬぐいの持つ魅力が再確認されると考える。
細辻伊兵衛美術館のように手ぬぐいの良さに触れられる場を通して、手ぬぐいで毎日の暮らしを楽しめる人が増えてほしい。